バイオガス硫化水素除去用酸素発生器
グリーントランスフォーメーションやエネルギーコスト上昇などの最近のトレンドにより、バイオガス由来のバイオメタンの需要が拡大しています。再生可能天然ガス(RNG)としても知られるバイオメタンを生産するには、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、および水をバイオガスから除去する必要があります。多数の段階がある手法の一部として、酸素(O2)発生器の使用によるH2S除去があります。この方法では、原料廃棄物を処理する消化槽に酸素を注入します。また、最良の結果を得るためにこの処理方法に他の技術を組み合わせて使用します。
本稿では、特に硫化水素(H2S)との関連で、バイオガス用酸素発生器に焦点を当てます。これは、硫化水素ガスがバイオガス生成に使用する廃棄物の副産物だからです。この方法を取らないと、腐食性の高いH2Sがエネルギー生産の問題になるおそれがあります。実際、ほとんどの天然ガスグリッドには硫化水素ガスの許容限界があります。ここでは、バイオガスについて簡単に紹介した後に、酸素がH2S除去に最適な方法である理由を説明します。
バイオガスおよびバイオメタンとは
バイオガスの生成にはさまざまな種類の廃棄物が使用されます。これには農業廃棄物、有機廃棄物、産業廃棄物が含まれます。バイオガスは、本質的にこうした廃棄物の分解によって生成されますが、これは「嫌気性消化」として知られています。 廃棄物には、H2Sなどの硫黄化合物が多く含有されているため、これを分離する必要があります。H2Sは、腐食の原因になるのにくわえて、環境によくないのです。
先述のように、H2Sの除去は、バイオガスをバイオメタンに変える上で不可欠です。そのための処理には一般に、消化槽、バイオガスブロワー、低圧冷凍式ドライヤ、バイオガス圧縮、メンブレンCO2除去(PSA)、その他の技術が含まれます。ここでは、CO2回収も可能であり、バイオガスプラントが収益を増やす手段になります。
先述のとおり、H2S除去のために消化槽に微量の酸素を導入します。廃棄物が分解してガスに変化するのはこの消化槽なのです。結果的に、バイオメタンは浄化されてバイオガスとなります。これは天然ガスと同じと考えられています。
H2Sの除去に酸素を使用する理由
バイオガスからH2Sを除去する方法はいくつかあります。一般的なものとして酸素投入と第二鉄投入があります。最適な手法を検討する際、酸素投入は保守作業が少なく、一般的に費用対効果が高いということを考慮することが重要です。
第二鉄の投入では、第二鉄塩/塩化物を定期的に補充する必要があり、活性炭フィルタも同様に定期的に交換しなければなりません。これは、運用コストが余分にかかることを意味します。この種のコストが他の方法でも同様に必要なことは、下記で説明している他の方法でも同様です。酸素投入が最適の方法である理由については、後でさらに説明します。
その他の方法
他の手法には、水酸化鉄洗浄、水酸化ナトリウム(NaOH)洗浄、酸化鉄ペレットがあります。前の二者は化学的処理であり、再生と注意深い廃棄物管理が必要です。酸化鉄ペレットでは、ペレットを正しく保存して使用することが重要であり、再生が複雑になるおそれがあります。
水洗浄は、入手が容易な水を使用しますが、H2S濃度が高いバイオガスには適しません。また、H2S飽和水を適正に処分する必要があります。
酸素発生:低コストの効率的代替手段
H2Sレベルを下げる手段として、上記全てに代えて酸素の採用が可能です。これは、酸素とH2Sの生化学反応、すなわち好気性反応を利用して、H2Sを硫黄と水に変換するものです。それには酸素を適切な濃度で使用することが重要です。酸素濃度は、0.3~3%の範囲内で管理しますが、通常、最良の結果を得るには、バイオガス中の酸素濃度を1%にする必要があります。
まえがきで述べたように、このシナリオではオンサイトの酸素発生器が最適です。化学物質を必要としないため、例えば、第二鉄投入よりも持続可能な手法といえます。また、必要な保守作業も比較的少なく、総所有コスト(TCO)を節減にも役立ちます。以下、酸素発生器について説明します。
酸素純度に関する考慮事項
バイオガスをバイオメタンに変換するために酸素を使用する場合、O2純度に注意することが重要です。純度が低すぎる場合、窒素(N2)が過剰に含有されるおそれがあります。そうなるとバイオガスのエネルギー量が低下します。一方で、酸素(純度と流量)が多すぎると、不要な余剰分が生じ、安全面でリスクが生じる可能性があります。そのため、バイオメタン生成のための適正な酸素濃度に精通した知識豊富なガス専門家との協力が望ましいのです。
バイオガス用オンサイト酸素発生器
本稿で説明しているように、酸素供給量を制御する最適な方法は、オンサイトの酸素発生器です。この装置は、濃度を設定可能であり、前述のリスクを軽減するのに役立ちます。また不要な高濃度酸素の生成を避けることによってコストを節減します。
外部からの酸素供給による作業は可能ですが、生産のボトルネックになるおそれがあります。しかし、オンサイト生成であれば、物流面の懸念を回避できます。また、外部供給では、輸送車両が排出するCO2により環境への悪影響が生じます。こうしたことは、他の長所と共に、オンサイト酸素生成の関連記事で取り扱います。
サポートが必要な場合
本稿により、バイオメタン生成へのオンサイト酸素生成の使用が有益である理由の概略がうまく伝わっていれば幸いです。本稿で取り扱っている話題に関して詳細な情報が必要な場合は、アトラスコプコのチームが喜んでお手伝いいたします。オンサイト酸素発生器関連のあらゆる内容について話し合う準備が整っています。いますぐ、お気軽にお問い合わせください。