エレクトロモビリティとバッテリ製造の分野は急速に発展し、生産プロセスに革新的なソリューションが必要とされています。最新のEVは、寿命、性能、安全性を最適化しなければならないさまざまな種類のバッテリを使用しています。そのため、ディスペンシングソリューションが組立に有利です。高性能の接着剤、シーラント、または熱伝導材料を効率的なディスペンシングシステムと合わせて使用することで、生産効率が高まります。その結果、軽量化だけでなく、コスト削減や持続可能性の向上にもつながります。
バッテリ組立プロセスに共通する6つのディスペンシングの課題
長年にわたり、電気自動車の生産工程では、数多くの塗布が一般的になってきました。その始まりは、エンジンのシーリング工程で知られる単純なシーリング塗布などでした。これらは現在、急速に変化するイノベーションへと進化し、生産プロセス全体に革命をもたらしています。
バッテリ組立には、円筒形、角柱形、パウチ形といったバッテリセルタイプやバッテリの設計に応じて、さまざまな塗布プロセスがあります。
- Cell and sidewall bonding
- Battery tray sealing
- Thermal management
- Fire protection
- Battery cover sealing
- Corrosion protection
セルやサイドウォールのボンディング
セルスタックやサイドウォールのボンディングは、EVバッテリの製造における重要なプロセスです。充電中や放電中に電気の絶縁を維持し、セルを膨張させながら接合する必要があります。これらのプロセスには精度と速度、柔軟性が求められるため、確実に高品質なバッテリを生産することができます。このようにして製造されたEVバッテリは、自動車業界の厳しい安全基準と性能基準を満たしています。
セルとサイドウォールのボンディングの課題:
角柱セルバッテリでは、スタックへのセルの固定が課題となります。熱や力を加えることはできません。接合部は、アプリケーションの品質、剛性、衝突時の挙動において最も高い要件を満たす必要があります。セルスタックの周囲にサイドウォールを接着する際にも同様の問題が発生します。このため、製造にはこのプロセスに二成分型(二液)材料がよく使用されます。硬化に熱は必要ありません。2成分型材料を使用する際には、安全な接着を確実にするため、最初から塗布と工程の品質を正確に行う必要があります。
セルとサイドウォールボンディングのソリューション:
アトラスコプコのSCA製品ラインは、高精度分注ソリューションを提供しています。気泡の発生を抑え、プロセスの高い信頼性を保証します。お客様のご要望に応じて一液および二液材料の塗布をご用意しています。二液材料塗布は一般的にセル同士の接着に用いられ、硬化に外的な熱は不要です。高い計測精度と混合品質を誇る当社のシステムは、高度な二液塗布でも高速で安定した品質で対応することが可能です。
バッテリトレイのシーリング
EVバッテリは湿気を嫌います。どのような湿気も、性能に影響を与える恐れがあります。バッテリの設計によっては、トレイ内側の端部分に湿気が溜まることがあります。製造時に、MSポリマーのような材料を内側の輪郭やトリムエッジに塗布することで、バッテリを湿気の侵入やガス漏れから保護することができます。
バッテリトレイシーリングの課題:
複雑な部品形状や生産中の位置のずれで、アクセス性や精度が困難になります。また、プログラミングに多大な労力を要することもあります。パーツの形状次第では、締付を100 %達成するために異なるシーム形状が必要となる可能性があります。
バッテリトレイシーリングのためのソリューション:
当社のEスワール 2AdXアプリケータは、バッテリ トレイの形状に合わせてビード塗布とスワール塗布をシームレスに切り替えることができます。スワールパターンは、材料配分を改善し、シール作業に役立ちます。当社のE-Swirlは、柔軟な塗布距離と簡単なプログラミングでお客様にご満足をいただいております。アプリケータは、アクセスが困難な場合でも安定したプロセスウィンドウと品質の確保を実現します。当社のISRA VISIONロボットガイダンスソリューション、SHAPEMATCH3Dと組み合わせることで、プロセスの開始前にバッテリトレイの位置ずれを考慮して、正しい位置から正確に塗布が開始されるようにします。
温度管理
バッテリセルは、充電中および放電中に熱を発します。安全性を考慮し、この熱エネルギーを制御してディスペンシングをすることが重要です。そうすることで、長期間のバッテリ容量の維持も可能となります。過熱状態を防ぐため、バッテリトレイとセルモジュールの間にサーマルインターフェイス材(放熱材/ギャップフィラー)を塗布します。これにより、大容量バッテリパックの有効な温度管理が可能となります。生成された熱は、適切な冷却構造に分散されます。
放熱材の塗布に関する課題:
バッテリ製造には温度管理が欠かせません。バッテリの性能を保ち、過熱を防ぐには、高電圧バッテリセルを所定の温度範囲内で操作する必要があります。このため熱伝導性ペーストを塗布しますが、完全な熱伝導性の達成には、気泡が浸入しないことが重要です。液状のギャップ充填剤が大量に塗布されるため、これは難しい課題です。さらに、素材の粗さによる装置の摩耗も課題となっています。
当社のソリューション:
当社の産業用ディスペンシングソリューションは、高精度の測定技術とシステムコンポーネントを提供します。これらは、大量の研磨材を高い生産性レベルで扱うよう設計されています。材料の使用には高い精度が求められます。最適化されたパターンが、塗布プロセスにおけるエアーポケットを抑制します。バッテリトレイのビジュアル3Dスキャンの追加により、必要な材料の量を正確に知ることができます。これにより、高価な材料を節約して、サイクルタイムを追加することなく、幅、位置、ビード連続性に関するディスペンシングのエラーを即座に検出することができます。
防火対策
EVバッテリセルが発火した場合、バッテリカバーを突き破って燃えてしまう危険性があります。中国の例を挙げると、最新の安全規則では、火災発生時に乗客が車両を離れるまで、少なくとも5分間を確保するよう規定されています。対応策の1つが、耐火性素材の液体を塗布した層でバッテリカバーを覆うことで、これには多くの場合、二成分型(二液)材料が使用されます。
防火上の課題:
防火剤の層は、カバーの表面全体に一定の厚みで塗布する必要があります。生産の下流工程で問題が生じぬよう、ギャップやオーバーラップは厳しい許容範囲内に納める必要があります。エポキシなどの材料のスプレー塗布には多くの欠点があり、空気中の物質粒子が健康上のリスクとなります。フラットストリームによる塗布が代替策として挙げられますが、二液材料をフラットストリーム塗布することは、これまで困難なものと認識されていました。
当社の防火塗布ソリューション:
当社は、二液材料をシャープなエッジのフラットストリームで塗布するソリューションを開発しました。SCA FlexS.Sealアプリケータは、2つの成分を正確に調合し、ノズルに追加されたニードルバルブが、調合された材料を適切な圧力で分注します。当社は、品質に影響を及ぼす材料の残留物を抑えるよう、バルブを最適化しました。これにより、使い始めから終わりまで広範囲をクリーンな状態で迅速、正確、均一に塗布することが可能となります。健康リスク、材料の無駄、マスキングを削減し、オーバースプレーの問題もありません。
バッテリカバーのシーリング
有害なガスの蒸発と湿気の浸入は、EVバッテリの安全性と性能に影響を与える可能性があります。これを防止するため、バッテリの製造の際には、組立工程でいくつかのシーリング手順を実施し、部品のずれやコントラスト比の問題にも対応するよう品質保証を念頭に置く必要があります。
バッテリカバーシーリングの課題:
カバーシーリングの場合、ビードの切れ目がないこと、開始と終了が正確であること、またビードの高さが均一であることが必要です。同時に、補修を可能にするため、継ぎ目はリバーシブルでなければなりません。恒久的で弾性特性のあるホットブチルはこの用途に最適ですが、最適な加工のためには材料を160 ℃まで加熱する必要があります。黒色にコーティングされた面に黒色のシール材が使用されている場合、目視による品質検査は困難です。
バッテリカバーシーリング用のソリューション:
アトラスコプコのホットメーターは、高温の材料を最適に温度調整し、ビードの始端と終端をきれいにすることで、完璧なカバーシーリングを実現します。インライン3Dビジョン検査ソリューションのRTVision.3Dが、幅と高さを検査します。このソリューションでは、塗布中のビードの連続性と量も制御します。また、ビードの中心からコンポーネントの端までの距離を監視して、正しい位置を確認し、リアルタイムでずれを検出することが可能です。レーザー技術により、黒色に黒色といった困難な色構成でも簡単にビードを検査できます。
腐食保護
バッテリ製造では、腐食が生じないようバッテリの重要部分をシールする必要があります。最先端のバッテリ設計には、表面の切れ目、トリムエッジ、接合部が多数あります。たとえば、カバーとトレイの機械的な接合は、蓋のコーティングにわずかな損傷を生じる可能性があり、こうした部分から湿気が浸入して腐食リスクを高めます。特殊なワックスなどの腐食防止材を塗布することで、このようなリスクから重要な部分を保護することができます。
腐食防止材を塗布する際の課題:
多数の曲線や、端部、接合部のあるバッテリ表面の塗布は困難です。一般的な手動または自動によるスプレー塗布では、手作業によるやり直しやマスキング作業、材料の無駄が生じます。これは、腐食防止プロセスの生産性と品質に影響します。さらに、利便性の側面を考慮する必要もあります。接合部が腐食防止剤で覆われている場合、修理の際にねじを緩めることが困難となります。
腐食防止材の塗布に対する当社のソリューション:
IDDA.Sealは、ワックスの処理も可能なインテリジェントでダイナミックな液滴塗布です。液滴のひとつひとつを個別にコントロールすることができます。これにより、最高の精度と柔軟なビード形状が可能になります。ビードの幅と厚みをお客様のご要望に合わせて完璧に調整することができます。材料を可能な限り薄く正確に塗布することができます。必要な分だけ材料を使用できます。そのため、手作業による手直しや材料の使用量を最小限に抑えることができます。例えば、接合部材の先頭部分の塗布を省略することで、修理時にねじをクリーンな状態で緩めることができるようになります。
EVバッテリ製造の課題が、当社の産業用ディスペンシングソリューションです
当社の業界の動向に関する幅広い知識、課題と機会、当社の技術エキスパートと広範なネットワークで、お客様のプロセス、生産、収益性を大幅に改善するお手伝いをいたします。
接合プロセスはさまざまです。このため、アトラスコプコでは、ディスペンシングソリューションの購入前に、包括的な試用体験とコンサルティングを提供しています。13ヵ所のイノベーションセンターを有するアストラコプコのグローバルネットワークがイノベーションを産み出し、お客様やパートナーとともに課題に取り組む場を提供して、お客様のイノベーションの旅を加速します。
イノベーションセンターがもたらすもの:
- アプリケーションとプロセスの開発
- 材料試験
- 接合部の解析
- 技術統合
- パイロット生産
- 仮想トライアル
他にも多数あります。